【第6回 インタビュー】合併症

宮崎裕子先生 プロフィール

五反田みやざき内科クリニック
院長: 宮崎裕子先生
HP:https://www.gotanda-naika.com
糖尿病治療のほか、電話・オンラインによるメディカルダイエット外来や、病院専売の美容コスメの取り扱いもあります

横浜市立大学卒。
資格:医学博士・総合内科専門医・糖尿病専門医・産業医。
所属学会:日本内科学会・日本糖尿病学会・日本内科学会・抗加齢学会・禁煙学会等。甲状腺・下垂体・副腎・性腺などの内分泌疾患の診断、治療を行う。糖尿病については、妊娠糖尿病や1型糖尿病から2型糖尿病を含む生活習慣病、その合併症管理などを総合的に行い、漢方やダイエット治療なども行っている。

宮崎裕子先生

糖尿病において最も避けたいのが「合併症」です。糖尿病の合併症は、細い血管で起こる「細小血管症」と、大きな血管で起こる「大血管症」のふたつに大きく分けられ、代表的なものは下記の通りです。

細小血管症・・・網膜症、神経障害、腎症
大血管症・・・脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患

糖尿病の症状としてよく聞かれる「足の壊死(壊疽)」は、神経障害や末梢動脈疾患により起こります。神経障害が進むと、感覚が鈍くなり痛みを感じにくくなります。そのため、足の裏のタコを自己処理する際に皮膚を削りすぎてしまい、そこからばい菌が入って細菌感染を起こすという事例もあります。こうした場合、点滴で抗生剤を入れようとしても、血管が細くなっていたり、詰まっていると患部まで届きにくくなるため、治療も難しくなります。

壊死に至るような方は、血糖値もかなり高いと思われがちですが、実はそうとも限らず、糖尿病歴の長さや動脈硬化の進行度が影響している場合も多いのです。

そして、合併症は細小血管から起こるとも限らず、いきなり大きな血管に来ることもあります。たとえば、コレステロールや中性脂肪の数値が高いといったほかの要素が重なると、動脈硬化のもととなるコブ状の「プラーク」というものがドンと弾けて血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞につながることもあります。

特に男性は糖尿病の手前の段階でも動脈硬化が進んでしまうので、あるとき突然、心筋梗塞で病院に運ばれ、そこで初めて自分が糖尿病であることを知ったという方も少なくありません。そのため、合併症を避けるには、血糖値だけでなく、コレステロール、中性脂肪、血圧などのコントロール、禁煙、運動などがとても重要となります。

糖尿病はがんの発症率も上げるといわれています。インスリンには成長因子のような作用があるため、がん細胞においても増殖を助けてしまうのです。そのため、高インスリン血症の人は、大腸がんや肝臓がん、すい臓がんなどのリスクが高くなる傾向があります。ただし、それは自身のインスリンによるものであり、インスリン注射によって、がんのリスクが増えるということはありません。

また、高血糖の状態が続くことにより免疫が落ちるため、本来、体の免疫機能で排除できるはずのがん細胞が見逃されてしまう場合もあります。

そのほか、糖尿病により発症率が上がるとされている疾患には、認知症、うつ病、骨粗しょう症などがあります。

ところで、糖尿病の方は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化リスクが高くなるというのは、みなさん聞いたことがあると思いますが、これは免疫の低下だけが理由ではありません。

そもそも感染症というのは、血液が培地(ウイルスなどが培養、増殖するための生育環境)となるわけで、その血液の中に栄養分が豊富な糖がたくさんあるということは、ウイルスにとって増殖しやすい環境であるわけです。

感染症に罹患して重症化すると、体がより頑張るために、コルチゾールや成長ホルモンをたくさん出すのですが、そのホルモンがまた血糖値を上げるため、ウイルスにとってよりよい培地になってしまうのです。

こうしたさまざまなリスクを避けるためにも、必要に応じてインスリンを使うなどして、血糖をコントロールしておくことが大切です。