【第8回 インタビュー】運動法

宮崎裕子先生 プロフィール

五反田みやざき内科クリニック
院長: 宮崎裕子先生
HP:https://www.gotanda-naika.com
糖尿病治療のほか、電話・オンラインによるメディカルダイエット外来や、病院専売の美容コスメの取り扱いもあります

横浜市立大学卒。
資格:医学博士・総合内科専門医・糖尿病専門医・産業医。
所属学会:日本内科学会・日本糖尿病学会・日本内科学会・抗加齢学会・禁煙学会等。甲状腺・下垂体・副腎・性腺などの内分泌疾患の診断、治療を行う。糖尿病については、妊娠糖尿病や1型糖尿病から2型糖尿病を含む生活習慣病、その合併症管理などを総合的に行い、漢方やダイエット治療なども行っている。

宮崎裕子先生

糖尿病の改善や予防において、運動はとても重要です。体の中の余った糖をエネルギーとして消費できるのが筋肉で、運動して筋肉を動かすことによって、体の中のインスリンの効きがよくなり、効率よく糖を消費できるようになります。さらに脂肪が減って筋肉が増えることで代謝が上がれば、それだけ糖の消費効率も上がるわけです。

食事法でもお伝えしたように、体重の3%を減らすことを目標に運動をすることで、実際には体重が減らなくても、血糖値が下がる人はよくいらっしゃいます。

糖尿病外来ではその方が日頃どんな生活をされているかを詳しくうかがいます。デスクワークであまり体を動かす習慣のない方なのか、階段の昇り降りや歩くことが多い方なのか、定期的にジムで運動をされている方なのかなど、その方の運動習慣を知ることで、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを見るためです。

1日の適正エネルギー(kcal)=目標体重(kg)×エネルギー係数
目標体重:身長(m)×身長(m)×22

エネルギー計数:デスクワークがメインなら25~30、立ち仕事が多いなら30~35、力仕事や運動習慣がある場合は35~。

ただ、運動が足りないとしても、わざわざ時間を作ってジムに通ったり、ジョギングを始めるというのは難しいものです。何より続けられなければ意味がありません。そのため「朝だけ一駅分歩いてみましょう」、「買い物の行き帰りを早歩きにしてみましょう」など、その方の生活の中で、少しでも運動を足せそうな部分を探して実践していただくことを提案しています。

エスカレーターではなく階段を使う、電車では座らずに立つといった、ちょっとしたこともとても大切です。私もたまに昇降式の机を使って、立ったまま仕事をしていますが、これも座っているよりは運動になります。要は自分をいかにラクさせないかがポイントです。

もちろん、筋トレもとてもいい運動です。筋トレもウォーキングもされる方の場合、筋トレをしてからウォーキングをするほうが消費カロリーが高いので、そのようにお伝えしています。

また、運動と食事のタイミングについては、人によって個人差はありますが、血糖値のピークに当たる食後1~3時間に運動をするのが効果的といえます。

家の中でも、日常の動作と運動をセットにすると習慣として身につきやすくなります。たとえば、ももを高く上げて行う足踏み運動などであれば、歯磨きしながらでもやりやすいです。「テレビのCMの間にやってみましょう」とお伝えすることもありますが、座っているところからわざわざ立ち上がって運動をするというのは、意外と難しいものです。だから、お風呂の前など、何かをするために立ったついでにちょっとした運動を入れ込むというほうが実践しやすく、継続もしやすいと思います。

スクワットなどもいい筋トレですが、ひざの角度や姿勢が適切でないと、正しい筋トレにならないうえ、ひざに負担をかけてしまうので、最初のうちは鏡で姿勢を確認しながらやっていただいたほうがいいと思います。イスの背などにつかまりながらやれば、バランスを崩すこともありません。

お家に階段がある方は、その1段目を使って踏み台昇降をするのもおすすめです。そして、上皇ご夫妻が実践されていることでも話題となった「スロージョギング」であれば、ひざや腰への負担を抑えながら運動ができます。

回数や分数、何セットやるかといった目安は、年齢や目的によっても変わってきますが、ちょっときついな、疲れたなと感じるぐらいで、心拍数が少し上がる程度の負荷をかけられるといいと思います。

ただし、運動療法の効果は長持ちしないので、1週間分の運動を1日にまとめてやるよりも、週に3回ぐらいに分割して実践するのがおすすめです。